とろふわ食感から再生医療まで。古川機工のロボットハンド「SWITL(スイットル)」が切り開いた可能性

もちもち、とろーり、ふわふわ。
もちもち、もっちり、とろける、とろふわ、とろーり……飲食店やスーパー、コンビニなど、食品の売り場には「柔らかさ」を表す言葉が並びます。スイーツやパン、ハンバーグなどそのジャンルは多岐にわたり、マーケティング会社「ビー・エム・エフティー」による2023年の調査「おいしいを感じる言葉」では、これら“食感系シズルワード”が上位を占めました。Z世代女性を中心に利用される「Lemon8」でも、「もちもち」「とろける」「ふわふわ」が人気の上位に入っています。

柔らかい食感を好む人が多い一方で、その「柔らかさ」は製造現場にとって難題でもあります。少し触れるだけで変形してしまうような食品の加工を機械化するのは容易ではなく、多くの工程が手作業に頼ってきました。そこで登場したのが、新潟県長岡市の 古川機工株式会社 が開発したロボットハンド 「SWITL(スイットル)」 です。

SWITLは「パン生地の整列作業を自動化したい」という要望から2006年に誕生。マヨネーズやケチャップのようなゲル状のものさえ、形を崩さずにすくい上げて移動できるその技術は大きな注目を集めました。日本の技術を紹介するYouTubeチャンネル「ikinamo」では、英語字幕付きの紹介動画が320万回再生を突破。さらに2015年度には文部科学大臣賞・技術部門を受賞するなど、高く評価されています。

SWITLはパン製造ラインをはじめ、ハンバーグやスイーツの生産現場でも活躍。従来は難しかった“とろけるような柔らかい食品”の自動化を可能にし、省人化・コストダウン・品質安定化を同時に実現しました。
まさに、「柔らかさ」という日本の食文化を支える見えない立役者といえるでしょう。

古川機工の技術と可能性 ― 食品から再生医療へ

SWITLの技術は食品分野だけにとどまりません。冷凍ピザの製造など形の崩れやすい工程にも活用されているほか、近年では 再生医療の分野 にも応用されています。
東京女子医科大学先端生命医科学研究所の「細胞シート工学」では、厚さ10〜30μmという極薄の細胞シートをピンセットを使わず安全に移送するため、SWITLの技術が採用されました。角膜や心臓、食道などの臨床研究のほか、創薬・培養肉研究への応用も期待されています。

また、古川機工はSWITL以外にも独自の食品加工機械を多数開発しています。

ドリップシート・トレイ供給装置
 食肉や鮮魚のトレイにドリップシートを自動で敷設。手作業を大幅に削減し、鮮度保持を効率化。
バタリングマシーン
 調味料を両面に均一塗布できる装置。既存ラインを大きく変えずに新商品開発を実現。
これらはすべて、顧客の現場課題を丁寧にヒアリングするところからスタート。現場視察を経て、培った技術と発想でフルオーダーメイドの装置を設計・製造しています。
“課題解決型のものづくり”を掲げ、顧客と二人三脚で新しい製品を生み出す姿勢こそ、古川機工の真髄です。